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2014/04/09ハーグ条約加盟と国際家事調停

離婚・国際離婚

五、国際家事調停の重要性
 国境を越えた子の連れ去り事案においては、正式な離婚手続の後に妻が主たる監護権を有する場合に(離婚後は共同親権を有する国においても夫婦が同居することはないので、一方が主たる監護者になり子と同居のうえ監護・養育し、他方は面会交流権を有すると共に住所、教育等一定の重要事項につき同意権を有するとされる場合が多い)、夫からの養育費の支払いがされなかったり、離婚後に自活しようとしても妻に特別な知識・技術・資産がなく就労ビザが発給されず生活に窮するような場合が多い。正式な離婚手続前の別居期間中に婚姻費用(妻と子の生活費)の支払いがされず、夫の家族から様々な嫌がらせに会い「自分以外皆敵」の状況に耐えられずに帰国する場合もある。
 このように国境を越えた子の連れ去りの背景には色々な事情があり、夫婦が別れるに際して取り決めておくべき諸問題について冷静に話し合えていない場合が多い。ハーグ条約の下では子の返還がなされた後に、その地の裁判所で監護権、養育費等の問題解決のために改めて法的手続をとることが予定されている。しかし、経済的に余裕のない妻にとってはかかる手続を外国においてとれないことが多く、仮にかかる手続をとろうとして常居所地国へ行くと誘拐容疑で逮捕され、釈放されるためには「司法取引」で夫の要求する一方的な条件を受け入れざるを得なくなるという不合理な事態が生じえる。
 また、裁判所から返還命令が出てもその執行は容易ではない。わが国の法案は直接強制に近い制度といえるが、かかる制度の下では泣き叫ぶ母親から強制的に子を取りあげるという事態が生じる。しかし、このようにして返還されても、前記の如く、日本人妻に資力がなく外国で法的手続をとれなかったり、逮捕の危険があって外国の子に会いに行けなくなり、父が子に会えるようになれば今度は母が子に会えなくなるというゼロサム状態が生じるのである。
 このような事態を避けるためには、わが国に返還命令を出す裁判所とは別に、関連する諸問題を話し合いで一挙に解決するための国際家事調停機関を設置することが必要かつ望ましいと思われる。感情的に対立関係にある当事者同士が直接話し合うよりも、専門家による調停により円満解決の途を探す場を設けることが「任意の返還」又は「友好的解決」に資することになる。諸外国においては、国際家事調停等の友好的解決により成果をあげている国も多くある。
 このような国際家事調停の利点としては以下のようなものが考えられる。
 (1)調停では裁判による返還命令よりも広い範囲の問題につき一挙に解決できる。返還命令の裁判では返還するか否かだけであるが、調停では子の返還を任意に友好的な関係を維持しつつ達するということの他に、離婚(別居中の場合)、監護権(親権)、養育費、面会交流、教育問題、財産分与、慰謝料等夫婦の未解決の問題を話し合いにより一挙に解決することができる。
 (2)友好的な解決であるから執行が容易である。調停で当事者が話し合いのうえ友好的に解決した場合には、養育費の支払い、面会交流等についても自発的に履行することが期待されるので執行困難な事態が避けられる。
 (3)刑事罰を回避できる可能性が大きくなる。国際的な子の連れ去りは、連れ去った親(又はそれに協力した親族も)刑事罰をうける可能性がある。しかし、調停により友好的に解決した場合には、連れ去られた側から告訴の取下げや嘆願書を司法官憲に提出してもらえば、厳しい追及はされないであろうし、今後の国家聞の国際的な取り決めで、かかる場合の刑事免責をお互いに保証できれば、面会交流も頻繁に行うことができ更に望ましい結果となる。
 (4)調停は損害賠償請求訴訟を回避しうる。配偶者の同意のない国境を越えた子の連れ去りは不法行為となるので、慰謝料等の損害賠償請求訴訟を提起することが可能である。しかし調停による友好的解決の場合にはこのような派生的な紛争を避けることができる。
 (5)ハーグ条約も友好的解決及び面会交流の支援を求めている。ハーグ条約は7条Cで中央当局の任務として「子の任意の返還を確保し、又は問題の友好的な解決をもたらすこと」と明文で定めている。これは返還命令はやむを得ないとしても「友好的解決」により一切の関連諸問題を解決することをハーグ条約自体が求めている。また面会交流に関しても、ハーグ条約は21条において、その重要性を強調し、中央当局が7条の義務の履行に際し、面会交流を確保するため、直接又は代理機関を通じて援助を与えることを求めている。

 イギリス、ドイツ、フランス等においてもハーグ事案の国際家事調停は利用されており、子の連れ去り問題に関しては裁判による返還命令よりも調停による友好的解決の方が望ましい解決であることが広く認められている。
 我が国には家庭裁判所の家事調停、弁護士会等における仲裁・和解斡旋があるが、これらは国内事案には対応できるが、子を連れ去られた父親が外国から話し合いのために来日したような場合には平日の夕方、土・日・祝日においても調停の実施が行われうることが望ましい。また調停人も予めこれらの機関に登録されている我が国の調停人に限らず、場合によっては当事者が望む外国の調停人が我が国の調停人と共に関与しうることが望ましい。このような事情から、ハーグ条約案件では既存の機関だけでなく、新しい国際家事調停機関が必要である。

 

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