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2014/04/08ハーグ条約加盟と国際家事調停

離婚・国際離婚

六、国際家事調停センター
 以上の理由により、日本がハーグ条約の実施法を制定する際には、国際家事調停センター等を設け、連れ去り問題に関連する家事問題(ハーグ条約加盟以前の面会交流事案を含む)に関しては正式な返還命令手続とは別に(審理の開始前、審理中、又は返還命令後執行前においても)国際家事調停センター等の機関において友好的解決を試みることが望ましいと思われる(法律上の調停前置主義は条約上困難としても事実上それに近い運用が望まれる)。そうすることにより夫婦問に対立感情を増幅させる返還命令の数は減少し、執行をめぐる困難な事態も少なくなると思われる。返還命令という裁判所の命令が控えていることにより、当事者(特に連れ去り親)は真剣に話し合いによる友好的解決を目指すからである。
 なお、国際間の面会交流を充実させることは友好的解決を促進することにもなり(子と何時でも面会できるのならば、外国人の父は引き続き日本人の母のもとで監護されることに同意することも有りうる)、今後も重要な問題であるので、返還命令とは別に、いつでも誰からでも国際家事調停機関に支援を要請しうるものとし、調停機関に国際面会交流センターの役割も期待することが望ましい。子の所在調査等も中央当局の委託をうけ関係諸官庁団体の協力を得て行うこととすれば、調停不成立の場合の返還命令手続への移行もスムーズにできる。

七、国際ADRセンター
 最近国際的な紛争には民間ADRが盛んとなっている。ADRとは調停、仲裁等の裁判外紛争解決方法(Alternative Dispute Resolution)のことをいう。
 国際紛争をいずれかの当事者の国の裁判で解決しようとすれば、裁判所は一方の当事者の国の機関であり、裁判官もその国の特別公務員であり、使用言語もその国の言語が強制され、他の当事者にとって著しく不都合である。これに反し、ADRは私的な紛争解決方法であり、当事者の合意により調停人、仲裁人等の手続実施者が選任されるので中立性が確保でき、手続や使用言語も当事者の合意で決められ、秘密性が保持され、比較的迅速に解決でき、かつ手続実施者も事案に応じて(法律家以外の者も含まれる)専門家を選びうるので専門性が高いと言われている。このようなADRの長所から国際紛争にはADRが多用されているのであるが、経済的に活気づいている東南アジア諸国では、かねてより自国を東南アジアにおける国際紛争の解決センターにしようとの構想から、政府の財政的支援の下に国際的ADRセンターが設けられている。その代表的な例としては「香港国際仲裁センター」(Hong Kong International Arbitration Centre, HKIAC, 1985)「シンガポール国際仲裁センター」(Singapore International Arbitration Centre,SIAC,1991)等があり、最近では韓国に「ソウル国際紛争センター」(Seoul International Dispute Centre,2013)が開設されたとのことである(これらのADRセンターでは仲裁だけでなく調停も行われうる)。韓国はあらゆる分野において国際化への努力がなされている。日本は経済大国といわれて久しいが、かかる政府支援による本格的な国際的ADRセンターは存しない。最近日本政府は企業の海外進出の支援に乗り出しているが、海外進出には国際紛争が必然的に伴なう。かかる日本人、日本企業の海外進出から生じるあらゆる種類の国際紛争を訴訟以外の方法で解決する国際ADRセンターの設立が望まれる。このセンターの中には商事紛争、投資紛争だけでなく国際家事紛争も含むものとし、東京と大阪に必要な物的設備(各種会議室、同時通訳等の設備を含む)と人的設備(事務、翻訳、通訳スタッフを含む)を完備したうえで、時差を考慮した利用しやすい運営(夜間、土・日・祝の使用可)が望まれる。既存のADR機関(日本商事仲裁協会、日本仲裁人協会等)や 面会交流を支援している「家庭問題情報センター(FPIC)」等の団体もかかる施設を利用しうることとすれば、日本における国際的ADRはますます発展し、東南アジアにおける国際紛争解決センターになるであろう。

八、むすび
 最近の新聞報道によれば、ハーグ条約に関しては、ハーグ条約の加盟と返還裁判手続等の実施法案のみが政府提出案として上程されそうであるが、返還命令だけでなく、ハーグ条約でもその支援が求められている友好的解決の促進と国際的面会交流支援のための対策も非常に重要である。かかる目的のために国際ADRセンターの設立に対する政府、立法府関係者の理解と支援が望まれている。

 

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