「友好的な解決」促進のために
このような「夫婦の別れが親子の別れ」とならないようにするためには、日本に「国際家事調停センター」を設立し、「友好的な解決」を促進すると共に、国際的な「面会交流」の支援体制を拡充することが、この問題の根本的な解決に資することになる。
わが国では離婚後親権を得た親が他の親に子を会わせたがらない場合が多い。現実に相談を受けた事案でも親権を得た母の実家の家族全員が子を父親から隔離するような状況をつくり、面会はもちろん電話やメールによる子へのアクセスをも妨害している場合があった。
これに反し、知人のアメリカ人弁護士は子供の頃両親が離婚して、主たる監護者たる母親の下で育てられたが、その後再婚した父親とも従前と同様自由に面会でき、父の後妻との間にできた子(本人からは妹)とも全く自由に兄妹として付き合っている(誕生パーティーには双方の親が出席して談笑できる)ということを聞き、わが国における面会交流の現状があまりにも遅れていることを痛感した。
親が離婚をすることはやむをえないが、せめて子に対しては双方ができる限り従前に近い状態で付き合える環境を維持するよう努力すべきである。
ハーグ条約が批准されてもそれ以前の連れ去りには条約は適用されず返還命令の裁判は行われない。従って、かかる連れ去り事案では面会交流が非常に重要となる。国内ではFPIC(Family Problems Information Center「家庭問題情報センター」)やNPO等が国内の離婚後の親子の面会交流のために土曜、休日を問わない地道な支援活動をしている。新しい「国際家事調停センター」はこのようなハーグ条約批准前の親子の国際的な面会交流をも支援する機関となることを期待したい。
ハーグ条約により子の返還請求をする子の連れ去られ親にとって何よりも辛いのは、ある日突然子がいなくなり子と全く会えないことである。離婚すれば夫婦は別居するので子はどちらかの親と同居することになる。監護権を有しない親にとっては子と自由に面会交流できることで満足せざるを得ない。
|