小原弁護士の論文が「The Lawyers 2011年9月」に掲載されました。
事例から考える「子の連れ去り問題」
—ハーグ条約批准と「子の最善の利益」—小 原 望
一.ハーグ条約の目的
1980年に採択され、1983年に発効し、日本政府が最近その批准を決定したハーグ条約(「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」)は、子の監護に関する事項に関しては子の利益が最も重要であるとの確信のもとに(前文)、子の国境を越えた連れ去りに関し、できるだけ速やかに子を連れ去り前にいた国(常居所地国)に返還することを目的としている。例外的に、子の返還により、身体的又は精神的危険がある、子自身が返還を拒否、連れ去りから1年以上経過し新しい環境になじんでいる、等の場合は返還を拒否できることになっている。どちらが子の監護権(親権)者として相応しいかは、常居所地国で決定することが望ましく、そのためには可及的速やかに常居所地国に返還することが子の利益となるとの立場に立っている。しかし、国際的な子の連れ去り事案の背景には様々な事情があり、子の返還により子の最善の利益を確保するのは容易ではない。
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