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2014/03/02ハーグ条約加盟と国際家事調停〜国境を越えた子の連れ去りの様々な事例②〜

離婚・国際離婚

〈事例7〉-日本人の子にパスポートが発給されない場合 日本人女性Bは外国の男性Aと国際結婚をし、その外国に居住している。2人の間には長男C(5才)がいる。ある頃からAは外に愛人をつくり、Bに対し暴力を振るうようになった。特に最後の暴力ではBが大怪我をし治療を受けなくてはならなくなり、刑事事件となっている。BはAとの離婚を決意し、Aと別居のうえ法律扶助によりAに対し離婚の裁判を提起している。AはBへの婚姻費用の支払をストップし、Bは婚姻費用請求の裁判を提起して勝訴したが、Aは財産を法人名義にして執行を回避し支払おうとしない。Bは現地の日本企業でパートとして働いているが、この収入だけではBとCが生活していくには不充分で、日本から持ってきた預金をとりくずして何とか生活しているが、それも長くは続かない状況になって来た。故郷のBの母は既に死亡し、定年退職した父が年金生活をしている。父はBにCを連れて日本に戻り、3人で生活することを勧めている。しかし、現地の日本領事館は父親であるAの承諾がなければC(Cは日本と父の本国の両国籍を有している)の日本のパスポートは発行をできないと言い、何回嘆願に行っても子の連れ去り防止のためといって発行を拒否し続けている。Bは毎週1回はCをAのところへ届け数日は宿泊のうえ面会交流できるようにしているが、Cを残してBのみが日本に帰国することは絶対にしたくない。Bは今後どうすればよいか。
 日本がハーグ条約を批准した後であっても、本件のように夫の暴力、かつ判決で命じられた婚姻費用の不払い等のある本件の下では、仮にBがAに無断でCを連れ帰ったとしても返還拒否事由に該当する可能性はある。
 日本の外務省は日本女性による子の連れ去りが多発して諸外国からの苦情が絶えないことから、在外邦人に対し連れ去りが違法であるという情報を流すと共に、日本人の子供の旅券発給の際には両親の同意の有無を確認するという運用をしている(外務省HP、在留邦人の皆様へ〜子の親権問題について〜〜国境を越えた子の連れ去り問題について〜2.未成年の子に係る日本旅券の発給申請について)。このような外務省の運用のために、多くの在外邦人、特に子のある日本人妻が出口無しの状況に追い込まれ苦境に立たされている。本件の如き場合に、AがCによる日本のパスポート取得に同意することはありえないが、このような場合にまで一律に両親の同意を発給の条件とする形式的な運用は一日も早く是正されるべきである。BとしてはAの同意が得られない事情を外務省に説明し、特にハーグ条約の下でも返還拒否事由に該当することを立証し(AがDVで刑事事件になっていること、Aは婚姻費用を支払うべき旨の判決を無視していること、BはAとCとの面会交流は認めているし、今後も認めるつもりであること等)Cのパスポートの発給を得てCと共に帰国することがやむをえない解決と思われる。

〈事例8〉-子の所在が不明のため3年を経過した場合 外国人Aと国際結婚した日本女性BはAの本国に居住し、2人の間には長男C(7才)と長女D(4才)がいる。BはAの度々の不貞行為(愛人は合計5人以上となる)に嫌気がさし、Aに離婚を申し入れるも、AがCとDを溺愛していることからAはこれに応じなかった。同国内で離婚の裁判をするには費用が高くつくことから、BはCとDを連れて日本に帰国してしまった。最初はBの実家に滞在していたが、Aに所在地を知られるのを恐れて、実家の近隣の都市にマンションを借りそこでBはC、Dと居住し、Cの通学する小学校には事情を話してCの住所を第三者に開示しないように要請していた。CとDに面会したいAは度々日本のBの実家を訪れBの所在を問うたがBの両親は開示することを拒否し続けた。そこで、Aは興信所にBとC、Dの居住地の調査を依頼した。興信所担当者は休日にBとC、Dが実家を訪れた後、マンションに帰るのを尾行してBらの所在を確認した。そこで、AはBの所在調査に時間がかかったことを理由にBらが日本に帰国してから3年後に返還請求をした。
 ハーグ条約12条の下では、1年が経過していない場合は当局は子の返還を直ちに命じなければならず、1年を経過した後に手続を開始した場合においても、子が新たな環境に適応していることが証明されない限り、子の返還を命じるものとされている。
 ハーグ条約に関する外国の運用(例えば米国)では、ハーグ条約に明文の規定はないものの、子の所在地を知った時から1年以内に返還請求をすればよいように解釈がなされている(“Equitable Tolling”)。今後の国内法における拒否事由の定めとも関係するが、3年経過していること等から「新たな環境に適応している」ということが立証できるか否かが争点になる。米国では一方の親が故意に子を隠した場合には、ハーグ条約により得られる便益(「新たな環境に適応した」等)の主張を許さないというのが判例である(かかる隠匿行為がなければもともと主張できなかったから)。

 

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